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おかえりなさい。

『和真、もう九時過ぎてるからはよ寝なあかんよ。』 そういったのは母親だった。

『うん、わかった、でもお父さんは?帰ってきた?』  そういったのは当時の僕だ。


『お父さん、まだ仕事終わってないから工場だよ』

『また?もう九時すぎてるよ?昨日も、この前も遅かったやん』

『終わらないんだから仕方ないでしょ、はよ、寝なさい。』

『・・・・わかったよ』








しぶしぶ布団のある部屋に入る前に、目に入る光景、そう台所。

さっき、兄弟3人で晩ご飯を食べたテーブルには、さっき自分が食べた時は出来立てで、湯気が出ていたおかずが、すっかり冷めた状態で、置いてあった。

2人分。

『お母さんもまだ食べていないんだ・・・・』



『なんで2人ともご飯食べてないんだろう?』

子供心にそう思った瞬間、布団に向かったはずの僕は、玄関へと走り出していた。

自分の靴をはかず、目に飛び込んできたお父さんのサンダルを足にはめ、玄関を飛び出した。

小学生低学年の僕とっては、そのサンダルは、わずか30m先にある、自宅横にある工場に向かうだけでも、

結構な体力を奪うくらい、ぎこちない、そんな大きなサンダルだった。。




それでも、

『走らなきゃ!』決して、運動が得意なほうではない僕が、30m離れた工場にたどり着くにはそう、時間がかからなかったようだ。

『ぎーーーーかーーーーーーー』と


なんとも言えない音を奏でる、僕にとって大きな鉄製のドアをひくと、突如激しい、眩しい光に襲われた。


工場までの道のりは真っ暗だったため、この光が僕の目に、残像とともに残った。

この光は、見たことがある、そうだ、あのお父さんが『スィッチ』握ると細いワイヤーがでてきて、とてつもない光を発光し、

定期的に聞こえてくる『あーーーーーひーーーーーぁーー』の音とともに白いドラムが回っている機械、そう、

『溶接機』だ。                 


『ジャァーーーーーー』と大きな音と、先ほどの強い光を出し、誰もが一度は見ると憧れる溶接面を片手に溶接をしているお父さんがそこにいた。

『お父さん!』


比較的、大きな声で呼んでみる、が、溶接途中に急に終われないのは今だからわかることだ。


それでももう一度

『お父さん・・・』




と、さっきよりも小さな声で言ったはずだが、お父さんが手を止めた。

もしくは、ちょうど溶接が切りのいいところで終わったのか、当時の僕にはどっちでも良かった。


『どうした、和真、まだ起きてるんか?明日も学校だろ、はよ寝れよ。』

そう言ったお父さんの口調は先ほどのお母さんより穏やかだった。

『お父さん、ご飯はまだなの?お腹すいてない?食べてからしたら?』

子供ながらに、ご飯を食べないで、大丈夫?と、働いているお父さんに対してとった言動だろう。



『そうか、そうだな、ご飯食べないと、あかんなぁ。でももう少しで終わるから、それから食べるわ、ありがとうな』

当時、親父は(今でもそうです)仕事が終わるまで、ご飯は食べないでいました。
それを、同じく待つ母親、何時になろうが、終わるまで、食べずに待っていました(今でもそうです)。






そういうと、お父さんは、また例の『スィッチ』握り、眩しい光と『あーーーーーひーーーーーぁーー』の音とともに

白いドラムが回っている『溶接機』を操り始めました。

僕が居ると、きっと邪魔なんだ、火花も散るし、異様な匂いもある。

やっぱり邪魔だから帰ろう。

そう思って、外に出た瞬間、また、次の溶接が始まったようだ。


溶接の光はかなり、強い。

工場から漏れ出した光は、漫画で昔読んだ、広島の原爆の『ピカドン』を思わせるような、そんな感じだった。

まして、工場の外が真っ暗暗闇なら尚更だ。

『もうかえって寝よう、お父さんにご飯食べてよって伝えたし。。』



一旦、溶接が終わり、僕が大きな鉄製のドアを開け、外にでてから、ドアを閉めようとした瞬間、

次の溶接が始まった。



『!?なに!?あれ?』


工場の前に道を挟んで向かいにある、僕より3つ年下のヒロちゃんんの家のガレージの締まったシャッターに、

何処から現れたのか、わからない、巨大な人の形をした影が現れた。。。

『!!!!!!!!!!!!』


僕は声を出そうにも、おびえて声が出ない、いつか絵本で読んだ妖怪か、もしくは、言うことを聞かない僕に

お仕置きをしにきた大魔神か?

そんな考えが僕をよぎった。と同時に、その巨大な影が、自分の影だった事に、気がつくまで、

わずかな時間しか費やさなかった。

『なんだ、僕の影か。でも、なんでこんなに大きくなるんだろう。』



不思議になって、だめだと思いつつ、ヒロちゃんの家の敷地に足を踏み入れ、僕が工場に来る前より、ずっと前に、
閉ざされた、シャッターに近寄った。

『あれ?』



先ほどまで、ヒロちゃんの家のてっぺん位に頭があった僕の影は、シャッターの前に来たときには、

ほぼ原寸大まで、小さくなっていた・・・


『あれあれ?・・』

なんだ、さっきのは幻か?

と前を向いたまま、後退したとき、目の前にある、お父さんの溶接から放たれる光によってまた影が現れた。

『あ!さっきより少し大きい?』

そう、光に近づくと影は大きく写し出され、逆に光から遠ざかると。影は小さくなる。



『そうか、さっきのお父さんの光で僕は大魔神になったんだ!よーーし!』



原理がわかった僕は、その影が小さくなったり、大きくなっったり、小さくなったり、大きくなったりを見ているだけで、幸せな気分になっていた。




『これなら兄ちゃんにも負けないぞ!!!』

徐々に後退し、光に近づき、影を大きくしていった僕の頭には、普段、2人の兄ちゃんに泣かされてばかりの仕返しを目論んでいたんでしょう。



『溶接したときの光で僕は大きくなれる』



そんな、期間限定、スーパーヒーローを夢見て、その夜は何度も何度も大きくなったり、小さくなったり。

時には小さくなった時は『ピンチ』なヒーローを演じ、大きくなったときにでも、無理な『ピンチ』作り、そしてそれを切り抜け、

そして、なにより、

自分なりにお父さんが毎晩帰りが遅い、その寂しい気持ちを紛らわせていたんでしょう・

『僕にはこの大きくなれる影がついている、と、言うよりも、大きくならせてくれる、大きな光を放ってくれる、お父

さんがいるんだ!そう、僕にはおおきなおおきなお父さんがいるんだ!』

そのときからか、その光がとても眩いけれど、溶接の光、最高な光、お父さんの光。そう感じるようになりました。


僕にも出せるかな、そんな光。

『おかえりなさい!ご飯たべようか!!!』

当時の僕に、毎晩遅く帰ってきたお父さんに、どれだけ言えた言葉かわからない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




『お い・・・・・・・』  父


『・・ずま!』      父


『お?・・・・何??』 和

『おい、和真、そろそろしまおうか、今日はお父さんつかれたわ、光も漏れるし、ヒロちゃんの家にも迷惑かかるから

シャッターも完全に閉めて、ドァ閉めようや。』 父


時計を見ると、もう夜の9時。親父ががそう言った。

『ほんとだ、もうこんな時間か、どうり腹が減ってる訳だ、親父も腹減ったやろ・』


『もうお腹ぺこぺこであかんわ』と親父。


『もうしまうおうか、なら、その部分溶接したら終わろうや。』


偉そうにそう親父に言って、

『じゃこれつけて終わろうか』と、親父。

『工場の前、片付けるわ』と、僕


と、言い放った瞬間に親父の『溶接』がはじまった。

『あーーーーーひーーーーーぁーー』の音とともに白いドラムが回っている機械、そう

あの時の『溶接機』、

あの時と変わってない、音、そしてそして変わってない光の強さ。

仕事をし始めてから、今まで、なんとも思わなかった、この瞬間、『パッ』

と、まえのヒロちゃんの家のガレージに映し出されている、巨大な影に遭遇した。


『久しぶりだなぁ、お前も親父と同じ様に、良い『光』だしているか?』


そんな大男のこえが聞こえてきそうな夜だった。



あの日、あの時、あの場所で、


『・・・・ずま、和真?、出来たで終わろうか、一杯のんで、ご飯食べようか』



そんな時、親父の声がして工場のシャッターを閉める音がした。


『おお。もうできたん?、なら、しまおうか』



またしても偉そうに口をきき、シャッターを閉めた。


遅くなったが、今夜は一緒にご飯が食べれそうだ。



『お帰りなさい』



今は一緒に工場で働いているから 『お帰りなさい』 は言えないけど、






『お疲れさん、さぁ、一杯やろうか!』







はっきり言えたかはわからない、


でも、最高な時間。待ちわびた時間。


やっとかなったなぁ。






これからもよろしくお願い致します。






『良い光』

か、まだまだだ。


でも、いつかきっと。




そう、親父の様に。







と、思った、夜風が涼しい、6月の夜だった。













































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かずまっち

Author:かずまっち
鉄工所の2代目である作者『かずまっち』が日々の業務内容などなど、赤裸々に書いています。

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